1995年創業、フルモールド鋳造を中心に、自動車用プレス金型や工作機械部品、一般産業用機械部品を製造。「納期からの解放」を追求し、確かな技術と人づくり、挑戦を大切に、お客様の心を打つ逸品を生み出す未来忍者集団です。
語り手
代表取締役 白江 一
技術営業部長 長崎 愛彦
工場長代理 若林 才傑
営業総務サブリーダー 蓬田里枝

「無」から「有」を生み出す
炎の向こうに広がる鋳造の世界
鉄を溶かし、まだない形をつくる

鋳造は、自動車部品や産業機械、インフラ設備など暮らしを見えないところで支える技術だ。鉄を1400℃で溶かして型に流し込んで部品をつくる。言葉にすれば簡単だが、現場の迫力は凄まじい。真夏の工場は空気が揺らぐほどの熱気に包まれ、黒々とそびえる巨大な溶解炉から赤く溶けた鉄が流れ出す。飛び散る火花は線香花火のようだ。SF映画のセットに紛れ込んだような非日常の世界。でもここで働く人たちにとっては、月に6、7回ある火入れの日の日常風景なのだ。事務所へ戻ると社員にも見学者にもおしぼりとアイスが配られる。「過酷な現場なので、このぐらいしないと申し訳なくて」と笑うのは3代目の白江一社長だ。
創業71年の光洋鋳造は、自動車のプレス金型を中心に、2キロから7トンまで、多品種の鋳造製品をつくる。主に用いる技術は「フルモールド鋳造法」。顧客から受け取った二次元図面を3Dデータに起こし、発泡スチロールを削って原寸大の模型をつくる。それを砂に埋め、約1400度で溶かした鉄を注ぐと、模型が揮発し、入れ替わるように鉄が満ちていく。冷えて固まれば、模型の形を写し取った鋳物が出来上がる。
「固体、液体、気体が3つ揃っているものづくりって、鋳造だけなんですよ」。3つの状態を操りながら「無」から「有」を生み出す。白江さんは、鋳造の魅力を「まだこの世界にないものを形にする、ものづくりの原点のような営み」だと表現する。
「超短納期」を可能にする価値観

転機となったのは、2008年のリーマンショックだった。売上の半分以上を占めていた風力発電用ギアケースの需要が急減。危機を感じた白江さんは財務データを分析し、利益率の高かった自動車のプレス金型用鋳物に活路を見いだした。自ら営業に回って新規顧客を着々と増やし、業績は右肩上がりに。一昨年には過去最高の売上に達した。
強みとなったのは、他社がためらう小ロットや一品ものにも応える業界最速の「超短納期」だ。二次元図面の3D化、加工機2台による発泡模型の内製、7.5トンの鉄を溶かせる大容量キュポラ(鉄を溶かすための大きな溶解炉)を備え、図面から模型、鋳造までの流れや加工ロスも無くした。
「短納期をつくり上げるのは、筋トレみたいなものだと思っています。常に負荷をかけて、その状態に慣れていく」と同時に部署ごとに休日をずらすなど、社員の負担も考えながら品物の流れを止めない仕組みも整えてきた。
2年前には、会社が大切にする価値観を短い言葉で示した。ミッションは、顧客を納期の悩みから救う「納期からの解放」。明日ほしいと言われたとき、「できません」と断るのではなく、「明後日の朝なら」「この条件なら」と最短の道を探る。ビジョンは「未来忍者」。伊賀の忍者のように陰で社会を支え、DXやAIも駆使して顧客の困りごとを解決する。行動の指針となるバリューもユニークだ。どんなに小さな製品でも量産品でも、顧客にとっては大切な要の部品。だから一点一点を最良の一品に仕上げる「逸品モノ」、手順と報告の順序をしっかりと守る「順番いのち」、そのためには人の話をよく聞く「俺の話を聞け」、短納期を目指しながらも安全と品質を最優先する「正義の桜」、どんな難題にも諦めず方法を考える「やればできるの術」。わかりやすい言葉で共通の価値観を持って、ミッションの完遂を目指す。
工場を開き、鋳造の魅力を伝える

光洋鋳造の急成長を支えてきたのは、社員の約3分の1を占める海外人材だと白江さんはいう。社内で日本語の勉強会を開き、なかには日本語通訳の資格を持つ社員もいる。また、近年目覚ましい活躍を見せているのが女性社員だ。ともすれば男性ばかりになりがちな鋳造の世界で、女性比率20%を目指して採用を進めている。
そのなかで入社した一人が、営業総務のサブリーダーを務める蓬田さんだ。「すごくグローバルで魅力的。この会社で働きたいと思って応募しました」。部署を越えて人をつなぐ。女性社員が加わったことで、これまでになかった視点が生まれ、社内の雰囲気も変わった。昨年のFactorISMでは、蓬田さんを含むチームが仲介役となり、社員同士で話し合いながら見学者を迎えた。終了後、現場の社員から「来てもらえてよかった」と声が上がったことが、心に残っているという。「みんなでやってよかったと、心の底から思いました。一体感が生まれたのがうれしかったですね」
暮らしの身近なところで使われているにもかかわらず、一般には鋳造の仕事はほとんど知られていない。2回目となるFactorISMへの参加も、「鋳造を知ってほしい」という思いからだ。技術営業部長の長崎さんは、鋳造の魅力を「社内で自由に型からつくれる。お客様が悩んでいることを、ほぼ形にして対応できることですね」と語る。大学時代に鋳造を学んだ工場長代理の若林さんは、入社前の工場見学で、それまで電気炉を使って実験していたのとは桁違いの迫力に圧倒され、この道を選んだ。「炎や巨大な鋳物だけでなく、小さな傷を見逃さない目や、設計どおりの形を実現する繊細さも見てほしい」と蓬田さん。危険と隣り合わせで、夏の暑さも冬の寒さも厳しい。それでも人を惹きつける魅力が、鋳造にはある。
まずは社員の家族に仕事を見てもらい、子どもたちが炎の向こうで働く人の姿に触れる。それがいつか未来の仕事につながってほしいと、会社をあげて願う。まだ知られていないからこそ、まだまだ伝えられることがある。鋳造の世界には、伸びしろしかない。